【chapter8　どうして私だけひとりなの？】第29話　恋がうまくいかなくて沈んだ気持ちから抜け出したい

恋活サプリWEB小説「幸せになれる恋の近道」

「素敵な男性と出会って、幸せになりたい」

「恋愛で遠回りをしないためのヒントが欲しい」

そんな女性の気持ちにやさしく寄り添い、

新しい恋に踏み出すパワーをくれる恋活WEB小説を作家の内藤みかさんが綴ります。

これまでの内容は、記事下のリンクへ。

■新しい恋を見つけたいのに

翌日、私は社員食堂でひとり、チキンソテー定食を食べた。

なんだか久しぶりに、ここに来た気がする。

最近は、川尻さんのことが気になって、外のカフェに行ったり、彼がカフェから戻ってきたらすぐに話しかけられるようにデスクでサンドウィッチを食べたりしていた。

すっかり、川尻さんに合わせた行動をしていたから。

食堂は、特に何も変わってはいなかった。

相変わらず混んでいるし、相変わらず味も普通で。

でもどこか、薄暗く感じてしまう。

光が差し込んでいたあのおしゃれなカフェのランチが、とても懐かしい。

でも、もう、あそこには、二度と行けない。

川尻さんは時々、彼女とあの店でランチをしていたのだろう。

だからあんなにおしゃれなお店でひとりでいたのだろう。

あそこは、彼のデート用の場所だったのだ。

本当のことが見えてきて、ただ、もう泣きたかった。

おまけに社員食堂に行く前に、おめでたいものまで手渡された。

元彼の新婚旅行のお土産……。

ハートの形のチョコレート。

いらない、と返したかったけれど、周りの人が気を使うから、適当に笑って受け取った。

■恋がうまくいかないのは私のせい？

どうして私は、ひとりなんだろう。

決まる人は、すぐに彼氏ができて、結婚が決まる。

私のようなガンコでワガママな女は、なかなか彼氏もできないし、やっとできても捨てられる。

結婚なんて、遥か遠い先のことのようで、辿り着けるのかも、もう、わからない。

私には、捨てられる原因があるのかもしれない。

それが何なのか、わかるのなら、誰かに教えてもらいたい。

カフェのみちるさんなら、教えてくれるだろうか。

あの人は時々鋭く厳しいことを言う。

だから本当のことを言ってくれるかもしれない。

チキンソテーは、全然味がしなかった。

きっと私は、疲れている。

もがいてももがいても、なかなか浮上できなくて、ずっと暗い水の中でひとりで溺れているような気がしてならない。

私以外のみんなが、どんどん幸せになっていく気がする。

置いていかれている気がする……。

■目の前に現れた新入社員の萩山くんに…

「ここいいですか？」

声がしたので顔を上げると、萩山くんがいた。

いつもと変わらない屈託のない笑顔で目の前にいた。

「あれっ、全然食べてないじゃないですか」

そんな彼のトレイの上には、またカレーライスがのっている。

きっと今日も定食が売り切れてありつけなかったんだろう。

「ちょっと食欲なくて」

「ダメですよ、ちゃんと食べなきゃ」

お母さんみたいなことを言いながら、彼は元気よくカレーを頬張る。

まるで何も見ていなかったかのように、彼は振る舞ってくれている。

きっと、気を使ってくれているんだ。

昨日のことが思い出される。

川尻さんには恋人がいたこと。

川尻さんと一緒にカフェから会社まで戻る道のりが果てしなく長くて、消えてしまいたくなったこと。

最高に落ち込んだ私のことを、川尻さんと一緒に歩いていた姿を、萩山くんは目撃している。

「あのね……」

私は口を開いた。

「昨日のこと、誰にも言わないでもらいたいの」

【chapter8】第30話に続く。