【chapter3　新しい恋の見つけかた】第10回　失恋後、奥さんのいる上司から食事に誘われて

恋活サプリWEB小説「幸せになれる恋の近道」

「素敵な男性と出会って、幸せになりたい」

「恋愛で遠回りをしないためのヒントが欲しい」

そんな女性の気持ちにやさしく寄り添い、

新しい恋に踏み出すパワーをくれる恋活WEB小説を作家の内藤みかさんが綴ります。

これまでの内容は、記事下のリンクへ。

■男性上司からのやさしい言葉

オフィスの廊下で息を整えている私に、

「大丈夫？」と声をかけてきたのは、チーフの川崎さんだった。

長身で、さらっとした感じの人だった。

私より３歳年上の彼が、心配そうにこちらを見つめている。

「あ、大丈夫です」

「でも、しばらく会社を休んでいたよね？　顔色も良くないけど本当に大丈夫？」

「ええ。本当に。すみません」

「ならいいけど、数日出社して来なかったから、ずっと、気にしてたんだよ」

そんな風に言われると、今の傷ついた心は、じんわりと熱くなってしまう。

「体が本調子になったらさ、メシでも食べに行かない？」

「……え？」

私は耳を疑った。

「なんだか元気がなさそうだからさ。うまいもん食って回復してよ」

「は、はい……」

胸がとくとく鳴り始めた。

誰かが私のことを気にしてくれていた。

それだけでも、とても嬉しかった。

■食事に誘ってくれた男性上司のＳＮＳを見たら…

川崎さんって、どんな人なんだろう。

ご飯に誘ってくれるということは、私のことを、いいなと思ってくれているのだろうか。

チーフとして一緒に仕事をしているけれど、彼はあまりプライベートのことを話さないので、どんな人か、よくわからない。

でも、心配してもらえて、くすぐったいような、嬉しいような気持ちだった。

彼のことが気になった私は、家に帰ってから、彼の名前をインターネットで検索してみた。

そして彼のSNSを見つけて、アクセスしてみる。

彼は、趣味が釣りらしく、SNSには釣った魚と共に嬉しそうな笑みを浮かべる画像がいくつも載っていた。そして、釣り仲間からのコメントもある。

けれど、画像の何枚かには、彼に寄り添う髪の長い女性の姿がある。

この人は、誰なんだろう。

釣り仲間にしては、距離が近い。

恋人が、いるのかもしれない。

せっかくふわっとしていた気持ちが、一気にしぼみ始めた。

けれど、SNSには、それ以上に強烈な言葉が書き込まれていた。

「妻と２人がかりで釣ったこの大きな魚！」

とある。

彼は、既婚者だったから。

■どうして私が本命じゃないの？

ちょっとでも期待していた自分が恥ずかしくてならなかった。

川崎さんの結婚を祝った記憶なんてない。

彼は中途で転職した人なので、勤務当初から既婚者だったのかもしれない。

だから知らなかったんだ。知らされていなかったから。

もし、私が彼のSNSを見つけて、奥さんの画像を見ていなかったら、どうなっていたのだろう。

川崎さんと一緒に食事をして、寂しさから、彼のことを好きになってしまったかもしれない。

そうならなくてよかった、と思う反面、どうして、私本命じゃないの？　と悲しくなってくる。

前の彼だって、結局結婚は他の女性とした。

私のことは、遊びだったのか、それとも途中で飽きられてしまうタイプなのだろうか。

川崎さんもどういうつもりかはわからないけれど、既婚者ということを隠して誘ってくるなんて、少しひどい。

一人で部屋にいるのが嫌になって、私は外に飛び出した。

足は、自然とカフェに向かっていた。

まだ、開いているだろうか。

【Chapter3】第11話に続く